満月の夜は、ご注意ください。




「菜美ちゃん、来たよー」



にんじん、玉ねぎ、じゃがいも。野菜を持って玄関に立っている。


この野菜達だったら……あの料理しか無い!



「はーい、あ、ベランダに居て下さい~」


「え、何で?!」


「部屋で食べるなんて言ってないですから!」



絶対に、ダメ。2人でとか。



「確かに言っては無いけど……うん。」



「だから、ベランダで待ってて下さい!」



「ちょっと待って、どういう事?」



「雨戸越しに夕飯食べるつもりです!」 



「俺、隔離されんの?!」



残念そうに聞いてくる。


なんで残念そうなのかわかんない。



「じゃあ野菜だけもらって良いですか?作るので……」


「ねぇ!食べるまでは部屋に居させて!」



両手を合わせてお願いしてくる。


もう絶対にこの手にはのらない!!



「嫌ですよ、部屋汚いんで!」



「そんなの気にしないから!」



「嫌なんです!」
 


「……分かったー…。」




しゅんとしたように横目で見てくる。


なんでしゅんとしてんの。



「これ、座布団です。」 


部屋から一枚座布団を持ってきて、木戸先輩に渡す。


「あ、うん。ありがとう。」


「じゃ、さっきみたいにベランダ行って下さいねー」



と、言ったと思った頃には、ベランダから声がする。


驚異の速さ……。



野菜を持ってキッチンへ向かって、カレーを作り始める。



「でもさー、冬じゃなくて良かったよー」


雨戸の奥からそんな事を言ってる。


「そうですね、でも私も鬼じゃないので、冬だったら部屋に入れますよ~」



冬だったら、凍え死にそうだし……。


まぁ、女の子だったら夏でも入れるけどさ……。


「えっ、じゃあ冬も来る!」



キラキラした子供みたいな目。


先輩のはずなのに、たまに年下っぽい。



「ま、その分ヒドいくらいに一緒に夕飯なんて拒否しますけどね~」


「でも菜美ちゃんだったら、最後はしょうがなく入れてくれそうだけどね~」



ハハハ、ってあぐらをかいて八重歯を見せて笑ってる。



「そんなに優しい人じゃないから、私はそんな事しないですよ…」



そんな事を話していると、鍋はぐつぐつしていて、出来上がりもそろそろ。



「先輩ー、そろそろ出来ますよー」



「わかった!」




お皿にカレーライスをよそって、机に置く。


いままでで一番美味しそうに出来た気がする。



「菜美ちゃん、食べよっか!」


すんなり部屋の中で座ってる。



「……そう……ですね…」



……まぁ、いっか。



スプーンと麦茶と……。





「「いただきまーす!」」




手を合わせて木戸先輩は夢中でどんどんと口に運ぶ。



あっという間に食べ終わりそう……。



沈黙が私達の間に訪れる。



何か……あ、聞こう…!



「先輩……あの……大狼君の……」



「……あぁ、分かったんだけど……」



いきなり、木戸先輩は真剣な表情で麦茶を一口飲んで、



私はゴクリ、と喉をならす。




緊張しているのか、ドキドキと心臓が鳴っている。









「晃太にとって……良くはない感情だった」