その後、菜美は状況が飲み込めないようだった。


普通、こんなの信じるわけない。


さっきまで初対面だったし、友達、なんて一言も言ったわけでもないから。


まぁ、もう一度だけ、オオカミ男だと言った。


すると、いきなり騒ぎ出す。



はぁ、これから怖がるのか……。



やっぱり、菜美も………。



『か、可愛い…………』



え。


聞き間違いか?


“可愛い”って聞こえたような……。


なんで、“可愛い”なんだ?


“怖い”じゃないのか?



怖くないのか聞いてみる。



あ、やばい、目がしみる。


まだ、拭いてなかったのか……。



『全然!可愛いし!』



そう言って笑っていた。


なんだろう、心が……ぽかぽかする。


あったかくて、包まれてる感じ。


すごく、すごく、安心する感じ。


“可愛い”


そんな言葉は女の子にあげる言葉で、


男が言われても嬉しくはないけど、


菜美が俺に言った言葉は、嬉しく感じた。