「はーいっ、練習終わりっ!片付けしたら各自解散ね~!」


はーい、という返事とともにガチャガチャと片付け始める。




なんか………。


さっきから、私変だ……。



練習中は、大狼君ばっか目が追いかける。


大狼君の声がするたび、ドキってする。


目が合った時の笑顔が忘れられない。




なにこれ……。


熱かなぁー……


なんて……。





多分、この感覚、知ってる。




もうしないって決めた感覚と同じ。




きっと、これは…………。



「菜美ちゃんっ、帰ろ!」


「菜美~」



後ろからの声に、ドキっとした。
 

やっぱり……。



「あっ、か、帰りましょう!」



「………へぇ…。」


ニヤニヤとした木戸先輩が目に入る。


……まさかね。



「な、何が“へぇ”なんですか?!」


「別にー?何でもないよー?」


まだニヤニヤしてる。


そんなわけ、ない。



「えっと、言い伝えの事なんだけど……」


靴に履き替えて校門を出る。


周りには大勢の生徒。


心なしか、こっちを見てる気がする……。


き、気にするな私!



「じゃあ、話すよ……?」


大狼君が私の様子を伺いながら話し始める。






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今から、ずっと昔の事。


ある町に満月の夜、オオカミ男とバンパイ
アが現れた。


オオカミ男とバンパイアは、昔から敵であり、出会うと何かが起きると言われていた。


この2匹が、特定の人を助けようとした時、時間が止まってしまうという。


それが、運命の人とも言われていた。


この話を、知らない人はいないほどだった。



オオカミ男は、ずっと1人で生きてきた。


家族も、友達もいない。


冷たさしか知らないオオカミ男。



バンパイアは、色んな女性と生きてきた。


でも、食料の“血”がない。


普通の血じゃ物足りないバンパイア。


 



温もりを求めるオオカミ男と、


女性の血を求めるバンパイアが、




ある日、同じ女性に恋をする。



その女性には、


温もりも、美しい血もある。



2匹は、どうにでもしようとして、女性を手に入れようとする。



するとある日、女性が助けを求めた。



そして、助けようとした2匹が出会ってしまう。



その時、この世の時間が止まった。



この互いの2匹は、相手の正体を知る。


敵、ということを知る。



でも、戦争のような敵ではなかった。


それは、恋敵、とでも言うものであった。





そして2匹は、自分の種族の名にかけて、




ある女性を自分のものにしようとした。









最後に、女性と結ばれたのは……




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