体育館に一歩ずつ近づくにつれて聞こえる
バスケシューズと体育館のフローリングの音。
シュートが決まる、ゴールのネットの音。
それにつられて、湧き上がる歓声。
私は、この音好きだなぁ……。
「来た来た~!菜美ちゃんっ!」
「お、遅れてすいません!海崎先輩!」
「全然大丈夫だよ~部室掃除ありがと~」
1つ上の2年生で、優しくて、癒し系。
もちろん、彼氏あり。
彼氏はバスケ部で、ラブラブ。
バスケ部のマネージャーの…
海崎 風呼 【KAIZAKI FUKO】
……先輩。
「いっ、いえっ、部室掃除ぐらい…っ!」
「助かったよ~!マネージャー2人に鳴っちゃったから大変だよね~」
そうなんです。
今マネージャーは私と海崎先輩だけです。
3年生の先輩は、早めに引退しました。
なので、部室掃除は部員にも手伝ってもらわないといけないんです。
「あ、じゃあ菜美ちゃん着替えてくる?」
「はいっ!すぐ着替えますっ!」
駆け足で更衣室に向かう。
体育館の更衣室は使う人が少ない。
使うと言っても……体育の授業の前ぐらい。
でも、人がいないからリラックスできていいんだけど……!
そんな事を考えながらジャージに着替える。
そしてカバンからバインダーとペンを取り出して更衣室を出る。
「じゃあ……菜美ちゃん出欠チェックしてもらってもいい?」
「分かりましたっ!」
えーと、今日いないのは……。
木戸先輩がまだ来てないのかな……?
まぁ、いっか、休みって事で……。
木戸透と書いてある名前の横にチェックを入れようとしたとき、
持っていたはずのペンが消えた。
「菜美ちゃん?休みじゃないからね?」
背後から声がした。
そこにいたのは、ペンを持った木戸先輩。
「そう……でしたね、ペン返してください」
「は、反応冷たくない?!」
「冷たくないですよ、はい、返してくださいねー」
「じゃあ、返してあげる代わりに今日ごはん作ってよ?」
はい?
なんでそうなる?
「嫌です。」
「いいじゃんっ、ダメなの?」
うるうるのチワワみたいな目で見てくる。
うん、実梨にはまだまだ勝てないなぁ。
「ダメです、はい、練習入って下さーい」
「えー……ケチー……」
ふざけたように笑って練習に入っていった。
なんでそんなに私にかまってくるんだろ?
へんな人…。

