ボーッとしていると、
いつのまにか、もう家の前。
家といっても……アパートだけど…。
「菜美、カギどうする?」
「カギ……もっかい探してみる!」
「じゃあ俺、ここらへん探しとくー。」
「ありがとー」
大狼君はアパートの周りをぐるぐる回って探してる。
そう言ってカバンを何度も何度も漁る。
………あれ。
この、鉄みたいな、固い、これ…。
もしかして……。
「あったのかー?」
「………あったぁ…!」
「おお、よかったな!」
白い歯がチラリと見える。
多分、大狼君はすごく笑顔だと思う。
「じゃ、また明日っ、準備できたら家来こいよ!」
「え、なんで?」
家来い……?
なんでだろ?
「今日約束しただろー?」
………約束したっけ…。
あ、ああ、朝行くって事かぁ!
「そうだったね、今日はありがとう!」
「ひ、暇だっただけだからな!おやすみ!」
そう言って汗を拭い、
くるりと背を向けて歩いていく大狼君の背中は
すごく、すごく、大きく見えた。
それと、見間違えだったかもしれないけど
耳がほんのり赤かった気がした。