「え……?」
「冗談だけど、どうした?!」
大狼君、笑ってる。
「べ、別に?!」
「俺、オオカミ男じゃん?だから、匂いには敏感なんだよな!」
得意気に笑う声が聞こえる。
2人だけの廊下に、学校に響いてる。
急にジャンプして私をおんぶし直す。
「ごめん、重いから降ろしていいよ!」
「いや、軽いし!乗っとけよ!」
多分、この声、笑ってる。
大狼君っていつも笑ってるなぁ…。
「そういえば、何か見ちゃったんだよね…」
そう、あの顔………。
思い出すだけで怖い……。
「あ、それ俺!」
笑いを堪えているようで堪えられてない。
「笑い事じゃないんだけど!心臓止まりそうだったんだよ?!」
「ごめんごめん、あ、もう出れるぞ?」
とりあえず謝っとく、って感じに笑ってる。
「……よいしょ、じゃ帰るか!」
「あ、ありがと!」
とてもとても重かったであろう私を降ろした後、
腰を伸ばしながら歩いてる。
軽い、なんて言ってたけど
重いのにずっとおんぶしてくれたんだ…。
欠けた月が私達を見守りながら、
私の中の何かを変えようとしているのを
私は知る由も無かった。