観覧車の下に、人影がひとつ。
実梨だ……。
「菜美……っ」
私が来たことに気づいて、駆け寄ってきた。
ニッコリと笑っているはずの瞳の奥は、かすかに潤んでいて
今にも泣きそうな表情。
私と目も合わせずに、うるうるしてて。
言葉をかけたら、涙がこぼれてしまいそうで。
でも、ほっとけないよ………。
自分勝手でごめんね、実梨。
「あのさ、みの………」
「聞かないで……!」
「え………。」
「お願いだから……ほっといてよ……」
「でも……ほっとけないよ…!」
「私の話聞いたところで、信じるわけないもん!」
「…実梨………っ?」
「友達なんだったら、ほっといてよ……!」
実梨の頬には涙がつたっている。
それをゴシゴシと拭いて、真っ赤にした瞳で私を見た。
見つめる、なんてもんじゃなくて。
睨む、っぽい感じで。
こんな実梨を見たのは初めてかもしれない。
「………ごめん…」
それから、みんなが居るところに着くまで、互いに一言も発さなかった。