「………え…っ?」
一瞬、バレたかと思った。
けど、菜美ちゃんに限ってそれはないか。
「……あのっ、離してもらっても……」
自然な上目づかいに、心臓が熱くなる。
ドキドキというような音がする。
「………ん……」
ゆっくりと離すと、俺をベンチに座らせた。
…………どうしたんだろ?
「先輩、顔色悪いですよ……飲み物買ってきます……!」
走って自動販売機へ向かっているのが見える。
2つあるうちの、遠い方に行った。
その先には、晃太がいるのも見えた。
そうか、遠い方に行ったのは、
晃太がいるから………。
そんなことよりも……
急に抱きしめてたりしてたから………
好きっていう気持ちが……
「…………………バレたかな……。」
深い深いため息まじりに呟いた。
「………き、き、木戸先輩っ………!」
いきなりの声に、ビクッとしてしまう。
あ、この声って……。
「えーと……花井さん…?」
俺の言葉に、ニコッとして
「………隣、いいですか?」
俺の隣に座った。
深呼吸をして、じっと見つめられる。
花井さん………の両手は、スカートの裾を、ぎゅっと握りしめていた。
「………先輩は……好きな子……いますよね?」
気づかないうちに、夕日が眩しくなって、
晃太と菜美ちゃんがぼやけてる。
花井さんの声が、ぼんやりとして聞こえる。
「………うん…」
ぼやけたような声で、小さく呟いた。
まっすぐ見つめられる視線を見ないで
夕日でぼやけた君だけを、見ていた。