なんで……大狼君がここに?
人がいないような電車に?
………どうしたんだろう…。
「おーい?聞こえてるかー?」
ぬっと、大きな手が私の目の前に出てくる。
「あっ、う、うんっ!」
………それにしても、何でいるのかなぁ……。
一緒に居られてすごく嬉しいけど……。
「………あのさぁ…」
「ねっ、ねぇっ!どうして大狼君がここにいるの………?」
そう言うと、大狼君は小さい斜めがけのカバンから何かを取り出した。
………あ、これって……
「財布拾ったからだ!」
私の財布!!
「………え、あっ、な、無い!!」
カバンの中をかき回しても、全く見つからない。
「たまたま外出てたら、菜美が転んで落としたのを見てた……」
そう言って私の隣にゆっくりと座った。
………転んで落としたのを見てた?
「転んだとこ見ちゃったの……っ?!」
「え、見たけど………。」
結構……豪快に転んじゃったしなぁ……!!
もう最悪………。
あ、でも。
「でもさっ、何でここに?!」
「困るかと思ってに決まってんだろ……」
決まってるんだ……。
………嬉しい。
「あっ、でも困んなかったよ?」
「じゃあ、財布ないのにどうやって電車乗ったんだよ……」
「たまたま、これがあったから………」
手に持っていたP○SUMOを見せる。
「………で、何かあったのか?」
………はっ!そうだった!!
「あのさっ、実梨が迷子になっちゃったらしくて………っ」
「実梨………って誰だっけ……」
「あっ、えっと!私の親友の可愛い子!」
「……あー、思い出した…。」
周りには、だんだんと人が乗車してきた。
そろそろ、乗り込んだ駅。
「で、これから終点まで行ってくるの!」
「じゃあ……遊園地はどうするんだよ?」
心配そうに、私を見つめてくる。
「遅れるって言っといて!ほら、乗った駅着いたよ、またね!」
もう少し、一緒に居たかった………。
なんて思いながらも、ドアを指さした後に手を振った。
「いいって、俺も行くよ」
え?
「でも、遅れちゃうし……」
………本当は一緒に来てほしい。
けど、そんな迷惑な奴にはなりたくなくて………。
「いいから、少しは頼れよ………」
その声がしたと思ったら、大狼君は、私の肩に寄りかかっていた。
「えっ、は、は、はいっ!」
顔が、すごくすごく熱い。
「なんで敬語なんだよ~…!」
………やばい、嬉しくて泣きそう。
それと、顔の筋肉がゆるんでニヤケそう…!