【菜美side】
目が、ヒリヒリしてる。
ジリジリ、焼けるように痛い。
空は、だんだんと暗くなっていて、
かすかに遠くにオレンジ色が見える。
隣には、木戸先輩。
そうだ……。
………私、泣いたんだ。
「……あの、先輩………っ」
お礼を言おうと、涙を拭いて隣を見ると
座ったまんま、静かに寝息を立ててる。
ふわふわした髪の毛が風に揺られてる。
まつげ長いな……。
………それより、もうみんな帰っちゃった?
体育館の中の時計は、6時ちょっと前。
それに、中には誰もいない。
………大狼君も、帰っちゃったかな……。
さっきの笑顔を思い出すだけで、胸がズキズキする。
大狼君の笑顔、好きなはずなのに……。
「……ぅ、………ん………おはよ…」
隣からの声にビクッとしてしまう。
……起きたのか……。
「……って、えっ、寝てた…ぁ?!」
目をゴシゴシとしながら、私に聞いてくる。
なんか………本当に先輩っぽくない………。
あ、良い意味で。
「………はい、寝てましたよ?」
「うわっ、片づけサボっちゃったよ~…明日園田に怒られる~……!」
頭を抱えてブンブンと振っている。
そんなに怖いの……?!
って、こんな事より!
お礼言わなきゃね……!
「………先輩、あの、ありがとうございました……!」
「いえいえ!じゃあ、帰ろっか!」
お礼を言った瞬間、私の手首を掴んで走り出す。
………えっ?!