あっという間に、ハンバーグは無くなる。
お皿には食べカスひとつ残ってない。
2人はその場で寝ころんで、テレビを見て笑っている。
時計は9時をさしている。
そろそろ、帰らせないと……。
「9時?!行くとこあるんだった!」
やばい、と言いながらもだらける木戸さん。
「じゃあ、2人きりはさすがにダメだから俺も帰る!」
大あくびをしながら言う大狼君。
内心、帰ってくれる!
という気持ちでいっぱいだった。
「おじゃましましたー、菜美ちゃんっ」
………ほんとに先輩なのか…。
「あ、木戸先輩って呼んでみて!」
「はぁ?嫌ですよ、そんなの。」
「言うまで帰らないから!ね!」
両手を合わせてお願いしてくる。
必死すぎるでしょ…。
めんどくさっ。
「木戸先輩、さよなら。」
勢いよく木戸さんを締め出す。
そして、スニーカーを履いている大狼君を見ていると
「明日も呼んでいいからねー!」
外から嬉しそうな声が聞こえた。
そして階段を登る足音が聞こえていった。
……おかしすぎ。
「菜美、ありがとな!」
そう言って外に出たとき、大狼君はその場にしゃがみ込んだ。
頭を抱えて下を向いている。
………頭痛いのかな。
「大狼君?どうしたの?」
私は大狼君と同じ目線ぐらいの高さに座って、顔を覗いてみる。
あの髪の毛には耳が、
ズボンの後ろからフサフサとした尻尾。
これって、もしかして?
「………見ちゃった?」
少しだけ震えている声に私はうなずく。
「…………俺、オオカミ男……なんだよ…」