高校三年生になった四月、



俺は担任に呼ばれ職員室に来ていた。



『…え…、俺がクラスの委員長?』


『そう!
梓なら成績優秀だし?ね?』


『なにが【ね?】だ。…真理ちゃんさ、
俺が面倒なこと嫌いなの知ってるよね?
だから、無理。』


『そんなこと言わないでよー!』



高校二年から担任の加藤真理は、
明るく周りからも評判の良い先生だった。


だから、加藤先生と呼ぶと『堅苦しいから、真理って呼んでよね。』と言うので生徒の大半は『真理ちゃん』と呼ぶ。



俺が、溜め息を漏らしていると横から、
長い黒髪の少女が通った。


俺は、何故か彼女の左手を掴んだ。


『…え…?』


彼女は頬を真っ赤にして振り向いた。


『あ…ごめん。』



"人違いか…。"



彼女は俺が触れた左手を胸に
当てて下を向いていた。


『あら、二人とも知り合い?』



『いや、初めて会った。』



『そうよね、今日から転校してきた
高橋碧さんよ。それで、
高橋さんはどうしたの?』



『…あ、先生に渡しておいてと頼まれていたプリントですが、一人だけ渡せませんでした。』



『お休みかな?誰だった?』


『桐原"梓ちゃん"です。』


『…あー、大丈夫。お休みじゃないわ。
"梓ちゃん"なら、ここにいるわ。』



『…え…?』



『…どうも、桐原梓です…。』







これが、君との出会いだった。