今日から高校生活のスタートだ。

自分の教室と席を確認して座った。

1番窓側の1番後ろの席だ。

めっちゃいい席だ、やったぁと喜んでいると

隣の席に、ガタンっと大きい音を立てて男子が座ってきた。

ビックリしてその男子の顔を見ると、
「なんだよ」
と睨まれた。

「な、なんでもありません。」
と思わず敬語になり、慌てて目線をそらした。




担任の先生が挨拶をしに教室に入ってきた。

この後は数学と日本史と音楽の授業があったけど、授業内容の説明で終わった。



ホームルームをするためにまた担任の先生が教室に入ってきた。

その時、
あの金髪野郎のことを思い出した。

見渡しても金色の髪の毛の生徒はいない。

別のクラスか....となぜか少し落胆した気分になった。

帰り際に廊下を見渡しても、靴箱でうろうろしてもあの金髪野郎には会えなかった。

外に出ると大雨が降っていた。

「うわ、最悪。」

朝は晴天。

傘なんか持ってきていなかった。

仕方なく駅まで走ることにした。

真っ白な制服がどんどん濡れてゆく。

バシャッバシャッ

泥はねがつき、茶色の斑点がつく。

早く駅に着かなきゃ。

無我夢中で全力で走っていると通りすがりの公園に金髪野郎が立っているように見えた。

こんな大雨の中、傘をささずに公園で立っている馬鹿がどこにいる。

まさかなと思い立ち止まり公園をよく見ると金髪野郎が立っていた。

「うーわっ。馬鹿だあいつ。」

なぜか見過ごす気にはなれなかった。

私は公園にバシャバシャと入った。

もう茶色の斑点だらけの制服は諦めた。

私が近づいているのに金髪野郎はこっちを見向きもしない。

気づいてないのかな?

「おい!金髪野郎!風邪引くよ!」
と大声で叫んだ。

その声に気づいた金髪野郎はゆっくりと私の方を見た。

何か考え事をしているような、なんとも言えない目をしていた。

「ねぇ、何かあったの?」
私はもう1度声をかけた。

けど、反応なし。

早く帰りたいのにこいつをこのままにしとくわけにはいかない。

「何か言いなさいよ!金髪野郎!」
とさらに大きな声で言った。

けど、また反応なし。

私はイラッとして金髪野郎の手首を握って公園から引っ張り連れ出した。

するとやっと我にかえった金髪野郎が
「なにすんだよ。」
と怒鳴ってきた。

入学式の時とは全く別人みたいなドスのきいた声だった。

ビックリして怯んだけど負けじと
「あんたがこの雨ん中、公園で突っ立ってるからでしょ!」
と言い返した。

「ちょっと考え事をしていただけだ。」
と言い金髪野郎は踵を返した。

「ちょっと.....」
と言いかけた瞬間、金髪野郎はその場にしゃがみこんだ。

慌てて近づいてよく見ると
腕や足や顔に擦り傷があった。

しかも体が少し熱い。

急いで肩を貸し、必死に歩いた。

身長差が激しく、とてつもなく歩きにくい。

けど、意地で駅まで歩き、改札口を通り
待合室で休憩した。

はぁはぁはぁ

授業の体育でしか運動しない私にとって重労働だった。




しばらく休んでいると、隣に誰かがドカッと座った。

見ると、クラスで隣の席になった男子だ。

げっ。。コイツまぢ苦手な奴。

そう思い、目を合わせないようにしていた。

すると
「手、貸そうか」
と言われた。

え、コイツがっっ

「大変なんだろ?」

えぇ、まぁ大変ですけど、今日お前に睨まれたばっかりだから、助け借りにくいんだよ。

「お前、毎朝、電車で見るから同じ方面だ。
もうすぐ電車が来る。ほら、行くぞ。」
と立ち上がった。

私も慌てて立ち上がり、2人で金髪野郎に肩を貸しながら歩き、電車に乗った。

私たちはずっと無言だった。

でも20分間も無言はキツイ。

かといって、金髪野郎はほとんど気を失ってるから、今日、睨んできた感じ悪いコイツと話さなきゃいけない。

渋々、
「あんた名前は?」
と聞いた。

「あぁ?」
と言いながら私を睨む。

名前聞いただけで睨むとかマジむかつく。

「伊藤 翔弥だ。」
ぼそっと答えてきた。

「あ、あたし、秋山鈴。
隣の席だしー、よろしくね。」

「あぁ。」




そんなこんなで、バス停までついた。

そこからは2人で私の家まで金髪野郎を運んだ。





金髪野郎を家の玄関に寝かせた。

「あ、ありがと。い、伊藤くんがいなかったらコイツを家まで運べてないかも。」

「別にいいよ。」
ぼそっと言い残し、伊藤くんはゆっくりとした足取りで階段の方へ向かった。

「あ、あんたさぁ、顔悪くないんだからもうちょっと感じよくしたら?」

伊藤くんは目が大きく眉毛も太く、顔のパーツがハッキリしている。
美形と言うよりはカッコイイ系だと思う。

本音を言ったつもりだけど
伊藤くんは足を止めただけでそのまま帰った。