ピッ‥‥‥ピッ‥‥‥ピッ‥‥‥。

  無機質な音が私の耳に響く。

  私は思い目蓋を開け辺りを見渡した。

  此処は一体何所だろう。

  私は窓を見てギョッとした。

  髪が長くて顔が無い女性がこちらを覗いていたのだ。

  だが、その女性は何をするでもなく私が見てるのに気付くと一輪

  の〝華〟を置いて消えてしまった。

  私は窓に近づきその〝華〟を手にした。


  実夢【‥‥‥‥‥‥‥ありがとう‥‥‥。】


  誰に言うまでも無く私は無意識にそう呟いていた。

  ガラッと扉が開き女性が立っていた。

  その女性は私を見るなり口を抑えて泣き始めた。


  ??【っ‥‥‥実夢っ‥‥‥よかっ‥‥良かった‥‥。】


  ??【和歌子、って‥‥‥実夢!?シン!先生呼んできて!】


  私は首を傾げてその状況を見ていた。

  一体、誰だろうこの人達。

  知らない人のはずなのに私の心には何か温かいモノがあった。

  それから白衣を着た人が来て精密検査をされた。

  

  先生【記憶に異常はありませんか?】


  実夢【‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥】


  記憶?

  記憶って‥‥‥何?


  先生【黑翎さんの知り合いの方達呼んできてもらえるかな】


  そう言って目の前の白衣の男性が隣の女性にそう言った。

  すると直ぐに先程私の目の前に現れた三人が入って来た。


  先生【この人達が誰か分かるかい?それと、自分の名前と‥。】


  実夢【私の名前は黒翎実夢。だけど、この人達は知りません。】


  それが、予想通りだったのだろう目の前の先生は頷いた。

  だけど、それ以外は何も無く私は家に帰ると言う事になった。

  家も家族構成も何も覚えて無い。


  実夢【此処が私の家ですか?】


  隣に居るのは和歌子さんと言う女性とトーマさんと言う義兄とシ

  ンさんと言う年下の幼馴染らしいのだ。


  和歌子【‥‥‥そうだよ‥‥私達が住んでいる家。】


  実夢【私達?皆さん家族なんですか?】


  和歌子【黑翎家は所帯なの。】


  実夢【そうですか‥‥。】


  私は再び家の外観を見た。

  どこもかしこものんびりとした妖怪みたいな者が居る。

  和歌子さん達には見えていないのだろうか‥‥‥。

  ただ、一つだけ気になる事がある。

  皆、私を見る度に〝華〟を見せて消えるのだった。