みかんの亡霊ごっこ




「あ、俺は蜂野千夜」


はちの、ちや


なるほど。


「偽名ってとこね。あたしは紺野蜜柑」



「え、なんで偽名ってわかったん?」


千夜、なんかよくわからないけど驚いてる。


「だってかっこいいもん名前」


「だろ、結構考えたんだぞ?」


なんてどや顔で言ってくるけど、あたしにはばればれ。



「違うでしょ。ひらめきでしょ。うーん、ピカーんみたいな」



こうさ、ピカーんだよピカーん。


「…なんかよくわかんねぇ」



すごく同感。



「友達によく言われる。ってかあたしの偽名にはツッコミないの!?」



「え、偽名なの!?」



「もちろん、蜜柑食べたすぎて名前にしてしまったよ的なあれ」



あ、紺野は本名です。



「なあ、俺怪しいとか思わないの紺野さん」

こてん、と首を傾げる千夜かわいい。


なんだろう、この人。あたしの的を得てる。

好みの的ね。



「ごめん蜜柑で頭いっぱいだった。あと、あたしは蜜柑でいいから。あたしだって千夜って呼んでるし」


ぜひ偽名の方で呼んでくれ。


「おう、唐突だなおい。了解した」


ちゃんと、敬礼のポーズをしてくれる千夜。うん、わかってるね。ナイス



「で、なにしに来た」



忘れかけてた言葉を吐いてみた。


本当は最初に言うべきかもだけど、あたしったらあんた誰とか聞いちゃうんだから。


次はしっかりしよう。次は。


「あーそれそれ。家追い出されたからしばらく泊めてくれませんか?」



「いくつ?」


「高3です」


はっ、ばればれ。


「高1でしょ、嘘はいけないよ」


「ごめんなさい参りました」


ほんとに反省してるのかどうやら。


グラサンかけてるからわからない。



「お姉さんは?いくつ?」



「高3だから」


「え!まじか年上…」



「信じんなよ高2です。まあどの道年上」



「まじか騙された」



騙される方が悪いんです。


あたしみたいに嘘を見破れる人になりなさい。


「あ、あと泊めないから」


「え、そんなあ」



や、普通見ず知らずの人泊めないからね。


そこ常識。


「千夜、今暇なの?」


「うん、暇」



「じゃあみかんの亡霊ごっこしようよ!」