わたしの名前は 田野 小麦 、高校2年。

目が悪く、いつも眼鏡で

髪はこけしヘア

身長も小さいから、みんなには

こけしって呼ばれてる。

わたしの通う高校は街からすこし

離れた小さな学校だ。

最近、わたしの学校では

ある話題でもちきりだ。



「ねぇ、日曜日、小麦も“RAISU”の

路上ライブ行くでしょ?」



親友の美優が目をキラキラさせて

聞いてきた。



「“RAISU”って誰?」



実は名前は知ってるが実際

どんな人なのか知らない…



「え!!小麦、“RAISU”のこと
知らないの!?」



目をまんまるにして聞いてくる美優を

見ると、たぶん、“RAISU”のことを

知らないのはこの学校でわたしだけ

みたいだ…



「うん…」



「もう、しょうがないなぁ!

説明してあげる!“RAISU”はね、

突然現れた 天使 なの!

毎週日曜日の3時、駅のそばで

いつもライブをしてるんだけど

詳しい場所は毎回ちがくて、

“RAISU”を見つけるのはいつも

姿よりも先に、歌声なの!」



こんなに必死に説明してくると

知らないのが申し訳なく感じてくる



「あのさ、なんで姿よりも声を

先に見つけるの?」



「いい質問ね!

わたしにもわからないんだけど

“RAISU”がライブの準備をしている所

を誰も見たことないの…

あんなに派手な格好だから、すぐ

見つかると思うんだけどな…

あ!それでね、探してると

3時ちょうどに歌声が聞こえてきて

その声を頼りに“RAISU”を見つける

ってわけなのよ!」



「へー…

でも、格好が派手なのにって

どういうこと?」



「“RAISU”はね、いつも、

黒い猫耳がついたパーカーをかぶって

いて、髪は真っ黒なさらさらロングで

前髪は眉より上なパッツン、

メイクは猫目風でアイシャドウが赤、

口紅も真っ赤で

ズボンはショーパンで、

左右色が違う黒と白のタイツを

履いていて、

靴はこれでもか!ってぐらいの

厚底ブーツなの!

…それでいてめちゃくちゃ

美人なのよ!」



「ふーん、それはめちゃめちゃ

目立つね笑」



「でしょ!?

本当、不思議なのよねぇー…

で、小麦もいくでしょ?ライブ!」



ここまで聞いて申し訳ないが…



「ごめん、美優、

用事があるから行けない。」



「もう!小麦が毎週日曜日、用事が

あるのは知ってたけどさ、

こんだけ熱く語れば一緒に来てくれる

と思ったのに…」



「本当、ごめんね?」



「いいよ!違う子誘うよ!

あ!ほら、次移動教室だよ!

急がなきゃ!」



…本当ごめんね。

付き合いが悪いのもだけど

あんなに“RAISU”について説明して

もらったけど、

本当は“RAISU”のこと



知ってる。



たぶん世界中で1番わたしが知ってる。



世界中で1番自分のことを知ってるのが















自分であるように…