「ほら、座れよ」
海岸に着くなり、翔は石段の上に座って隣を指して言った。
あたしは一度だけここへ来た
こんな大きな海に飲み込まれて死んだお父さん。
あたしから見たらとても大きい人だったけど、海から見たらとても小さいんだろう
「なんでここに…」
あたしはお父さんっ子だった
そしてお父さんはあたしを最後まで愛してくれた
お父さんはどんな思いでここに立ったのだろう?
あたしを残していくことにどう思ったのだろう?
前に来たときはまだまだ現実が受け止められなくて
どうしてあたしを置いていったのか、お父さんを責めてばかりだった。
もう一度大切なものができてここへ来てみると
お父さんは相当辛かったんだなって思えた。