大阪駅の改札口を通るたび、新幹線乗場に向かう通路を振り返った。

このまま行き先を変更して新幹線に乗り博多駅で下車し、肥前山口線に乗れば6時間弱で佐世保駅に着く。

何度も思いながら。

学校のこと、バイトのこと、何のために大阪まで来たのかを考えると新幹線には乗れなかった。

「近くの学校でもいいんじゃないの?わざわざ、そんな奨学生なんかしなくても」

「な~に3日と続かないさ。新聞奨学生なんて」

優しくたしなめながら大阪行きを止めようとする母とは違い、父は何故か小バカにし突き放した言い方しかしなかった。

ついカッとなってその後、出発日まで父とはろくに口も訊かないままになった。

出発日、佐世保駅の改札口を通り抜け0番線乗場に停車した夜行列車「みずほ」の紺色の車体がホームの灯りに照らされて、一際輝いて見えた。

父は最後までニコリともせずに発車の合図を告げるベルが鳴り始めた。

一言くらい声をかけてくれてもいいじゃない?いつでも帰ってきなさいくらい言ってよ。

そんな思いを胸にしまいこんだまま列車に乗り込んだ。