「……行こう、凜」 凪は凜の手を引っ張って、父親の横を通りすぎていく 凪の父親は凪の姿が見えなくなるまでずっと一点を見つめたまま動かなかった やがて 「………千代子…お前は…いなかったのか」 そうぽつり、と呟いてゆらりと凪とは反対方向に歩いていった いなかった? どういうことだ? 凪ではなく千代子と言った。 今の言葉ではまるで初めて、その千代子さんがいなかったことを知ったような口ぶりだ 俺は、どこか異様な雰囲気をもつ凪の父親の後ろ姿を見つめて自分の家に向かった