「……好きにしろ」
「……うん」

私がそれを受けとると、父はそのまま美術室前を後にする

「………っ…」

これでいい。
私が手を離せば…先生は先生でいられる

「………うっ……くっ」

嗚咽がこぼれないように、口を塞ぐ



私は先生の手を離した

キャンパスに生きた絵を描く先生の手を
私の頭を撫でる手を
優しく私の背中に回される手を
頬に触れる手を

もう届かない場所まで離れたのは私

後悔なんて、ない