自分に対する直哉の想いを知った涼香は、無意識のうちにログハウスへと向かってしまう。

出逢った時の風景から、ついこの間までの二人の時間。

思い出すことを止めようとしても、それに反応してしまう胸の鼓動は抑えることなどできなかった。



ずっと一緒にいられると思った時などない。

誰もいない二人だけの場所で、時計の針が進むことにも気づかぬほどに直哉を感じて、限りない『今』を過ごす。

好きになってもらえなくても、愛とか恋じゃなくても、誰とも違う特別な存在でいられれば、それで幸せだと思っていた。



涼香の目にあの星図が映る。

指でなぞるのは、水瓶座のライン。



「もしも占いが当たるなら……ねぇ、先生。今、私と同じように孤独を感じてる?」



溶けて消え入るような声で、涼香は独り呟いた。

今は涙を出す力もない。




「もう水瓶座デルタ流星群の時期ね」


「鞘野先生」



涼香が振り返ると、その後ろには望遠鏡を興味深く見つめる鞘野の姿があった。



「つい最近他の流星群が見れたばかりなのに、夏の夜は賑やかだわ。もちろん早瀬さんは見るんでしょう?」


「あ……はい。そうしたいとは思ってるんですけど、水瓶座の流星群は時間帯が遅くて」



沈んだ気持ちと動揺と。

涼香の心が落ち着く余地はなかったが、鞘野の明るい表情に合わせるように、涼香はその態度を変えた。

少しの間、さっきまでのことは忘れよう。