すれ違う車のライトに照らされた山根の顔は、さっきとは見違えるほど穏やかになっていた。

ステレオから流れる映画のサントラに耳を傾けながら、その細い体全体でテンポを合わせるように揺れている。



「山根先生、ごめんなさい」



うつむき姿勢で足元を見つめて、涼香は山根に頭を下げた。



早川のことでも直哉のことでも、山根には大きな迷惑を掛けてしまった。

今はいつもと変わらない様子だが、きっとずいぶん怒らせたに違いない。


涼香は何を言われるだろうかと不安に思いながらも、山根の言葉を聞こうとゆっくり顔を持ち上げた。



星が流れを止める。

瞬間的に音が消えたかのように錯覚する。

しかし山根は、ちらっと涼香の方に目をやり優しく笑ったかと思うと、何も言わないまま前に向き直り、再び流れる曲に体を揺らし始めるのだった。