プシューッ 扉が開き一人の女子高生がバスに乗った。 制服を見る限り直哉が向かう高校の生徒だ。 学校はもうすぐそこじゃないか。 時間にだってまだ余裕がある。 こんな所からバスを利用する意味があるのか。 直哉は自分の斜め前に座ったその女子高生をしばらく見ていた。 肩を越えるブラウン混じりのストレートヘアは、清潔感を否応無しに伝えてくる。 そして手の内には、小さめの本が半分栞をのぞかせながら納められていた。 「小説?」 呼吸に紛らわせて直哉は静かに言葉を吐いた。