「ねぇ、先生は何座なの?」


「……僕も、水瓶座だよ」


「ホントに!じゃあ、あの日の運勢は同じだったんだね」


「えっ」



直哉はあの朝の運勢を思い出した。

あの日の出逢い。

それは、決まっていたことなのだろうか。



「本当はね、神話って素敵だと思うけれど憧れてはいないの。だって、神話の中の恋はいつでも嫉妬と恨みが表れてる。必ず、邪魔をする存在が出てくるから」



そう言った不安げな表情を見て直哉は思う。

たとえ気持ちに応えられなくても、涼香の想いを、涼香のことを守りたい。

せめて二人の時間だけは、涼香と気持ちを重ねたい。



下を向けば一層長く見える睫毛の下で、いつまでも瞳が揺れていた。

スカートの上で小さく震える手に、直哉の手が近付いて行く。

今なら、夕闇に沈む太陽のおかげで、どんなことも目立たない。




ガラッ


音のなかった教室に響くドア。

恋を邪魔する存在は、神話の世界ではなくても現れる。