「帰りはどっちが早いかしら」 「多分美咲じゃないか。引継ぎはだいたい終わってるけど、今後の説明とか僕にはいろいろ面倒なことがありそうだ。あぁ、ごめん。歓迎会も今日だった気がする」 手を合わせて顔をしかめる直哉に、少し口を尖らせてわかったと合図した美咲は、鍵を振って見せながら地下鉄の駅に向かって行った。 そんな後ろ姿を見送って直哉はバス停に並ぶ。 通勤通学のこんな時間帯にバスに乗るのは自分が学生の頃以来だった。