今度は指先を手すりにトントンと打ち付けて、大きく息を吸いながら直哉の肩をしっかりと掴む。
直哉がどう返していいか迷っていると、山根は視線の先を空に向け話すのだった。
「オレは、自分の生徒がすごく大事です。そして卒業した生徒も、オレが面倒みてきた生徒は変わらずみんな大事です。それから……どんなことがあっても、やっぱり尊敬できる部分がある先輩は大事なんです」
「山根」
自分にさえ隠そうとしていた想い。
山根に背中を押されることで、どうしようもないくらいに感情が揺らされた。
タテマエをせがむように帰ることを考えてしまう。
ここまで思い知らされても、再び会うことが間違いであることのように……禁じられた放課後が、今も存在しているかのように……
「先輩、どうして欲しいってわけではないんです。ただ、どうしてもオレの中で心残りがあって。早瀬にすっきりさせてやれなかったような気がして。
あいつは今ちゃんと短大で頑張ってますけど、こういう時間をずっと与えてやりたかったと思ってました。
結果がどうじゃなくて、先輩の口から、ちゃんと全てを伝えてやってほしいんです。それに、先輩にもすっきりしてもらえたら、オレはそれで満足ですから」
そう言うと、山根は他の生徒の元に歩いて行った。

