あれから一年の時が流れた。

何かが変わったようで、何も変わっていないようにも思える。

星はあの時のまま、今もこうして輝いていた。




「The sky is clear and the star is seen well today,Mr.Naoya」
 (今日は空が澄んでいて星がよく見えますね、直哉)


「Mr. George. It is the Star Festival soon. Is the Milky Way shortly seen?」
 (ジョージ先生。もうすぐ七夕ですからね、近く天の川も見えるでしょうか)


「Japan might look beautiful than here.Haha…」
 (まぁ日本からの方がキレイに見えるとは思いますけどね、ハハハ…)


「え……?どうしてですか?」


「星は一緒に見る相手によって見え方が変わるそうですよ。君はいつも星空を眺めている。まるで天の川の対岸を見つめる彦星のように」



ジョージはそう言って笑いながら去って行った。

胸の中に、何か懐かしい想いが込み上げてくる。

直哉はもう一度夜空を見上げ大きく息を吸った。



「Naoya?」



ふと足下を見れば、研修で担当しているクラスの少年が直哉のズボンにしがみついている。



「ロン!こんな時間にどうした?」


「直哉先生が明日日本に帰るって聞いたから、ママに連れて来てもらったんだ」



少年が後ろを振り返ると、門の陰ではその少年の母親が頭を下げていた。



「ねぇ、また戻ってくるんでしょ?これからもボク達の先生をやってくれるんでしょ?」



不安げに直哉の顔を覗き込むその少年を前に、膝をついて視線を合わせる。

跳ねたゴールドの髪に手の平を置くと、直哉はその頭をくしゃくしゃと撫でた。



「もちろんだよ。来月から僕は君たちの正式な先生だからね」



その言葉に安心した表情を見せると、少年はまた母親の元に走って行った。

遠くからこちらに手を振っている。



「Have a nice summer vacation!」