「そうか。そう言ってくれて私もホッとしているが……。本当にそれでいいのか。
今さらこんなことを言うのもなんだが、君には山根先生の代わりに三年一組の担任を頼もうかということも考えていたんだ」


桜台高校の校長室。
筒井の言葉に、直哉は眉をしかめていた。

三年一組は涼香のいる文系のクラス。

思わず苦笑いがでる。

そこは今の自分には最も不釣り合いな場所。



「もう決めたことですから」 



そう言って直哉は校長室をあとにした。






夏休みに入る前の全校集会でおおまかな説明はされたものの、今回の事の詳細は保護者を含め生徒たちに知らされることはなかった。

詳しく説明されるほどに、目には見えなくとも心を傷付けられる者がさらにでてきてしまうことを避けた学校側の配慮だったが、そんなことを本人は喜ばしく思っただろうか。

涼香は体育館のステージに上がる直哉の姿をじっと見つめていた。