林がざわめきを立てる。
山根が足を止めた。
「今、何か聞こえませんでした?」
「上の方からですね」
早川も道の繋がる先を伺う。
浦辺はその後ろに身を潜めた。
「だ、誰か下りてきますよ」
三人が視線を向けた先からは、たしかに誰かが歩いて来ていた。
ヒールの音が闇に響く。
「やだっ!幽霊っ!」
「いや、鞘野先生!何してるんですか、こんなところで」
展望台の方から下りて来たのは鞘野だった。
「あら、先生たちこそ何してらっしゃるんです?」
「鞘野先生、上の方に誰かいませんでしたか。たった今声が……」
山根は鞘野に詰め寄った。
鞘野はその来た方向を一度振り返り、そして再び三人の方へ顔を戻すと、笑顔で言葉を返した。
「いえ、誰もいませんけど?今そこで私が転びそうになって声をあげたから……」
「先生ーっ!たすっ……」
「やっぱり上からだ!」
山根が駆け上がろうとすると、また上から誰かが走り下りて来た。
耳をふさいで、足早に自分達の横を通り過ぎていく。
「あれは……たしか先輩の奥さんじゃ。浦辺先生、あの人を追ってください。早川先生、オレたちは上へ!」
山根は息もつかぬ早さで暗闇に消えて行った。
早川が鞘野を振り返る。
「……一体何やってるんだ、おまえ」
そう言って、早川も山根の後を追って行った。

