ガッ!
強く蹴りあげたつもりだった。
しかしそれは、相手にそれほどのダメージを与えるものではなかったのだ。
「おい、大人しくしないと顔に傷ができるよ」
近付けられたナイフは月明かりに不気味に艶を見せる。
「お前そんなもん持ってきたのかよ、危ねぇな」
「脅せって言ったらこれだろうが」
「後のことも考えろよ。捕まった時面倒だろ」
男は三人いた。
顔立ちがまだ幼いことから、かなり若いのだろう。
互いに何かを言い合いながら、もがく涼香を必死で押さえ付ける。
「んっ……、くっ……」
展望台に架かるコンクリート階段の下は、さらに暗さを強調させる。
そこは空気も冷たさを増し、空間をとても狭く感じさせた。
ずっと地の底へ落されていくかのように、体が感覚を失い音も遠のいていく。
「なぁ、これやっちゃっていいの?」
「あいつ脅すだけって言ったぞ」
「いいんじゃね?どっちにしろ同じだろ」
「そうか。悪ぃな、オレらの出席日数かかってんだわ」
一人がそう言うと、見開いた涼香の目の前に光っていたナイフが、そのブラウスの胸元を切り裂いた。
「……せ、せんせっ」

