─パタン。 書斎の扉を閉め、一息吐く。 「…莉舞ちゃんか…」 あの子が入ってから、まるで化学反応のように周囲が変わっていく。 「…本当に、あれだけなのか…?」 彼女の過去については親御さんから聞いた。 でも、本当にあれだけなのだろうか。 「…やめよ」 だめだ。考えたらキリがない。 それに、今はそのことを考えるべきじゃない。 焦りすぎたかと少し反省し、手に持っていたお盆をキッチンに返すべく、足を動かした。