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長い髪で顔を隠すようにして、ユイはいつもの道をいつもの足取りで進む。
家にいるといつもの人達が五月蝿いから、適当に時間を潰す。


といっても、ユイが向かう先は毎回決まっているのだが。


「……おーい!菫ちゃあん!!ユイだよ〜ユイが来たよ〜お!!」


「うるっせんだよチビ子。菫さんなら、すぐ来るから黙って待ってろ。」


すぐに答えた乱暴な口調に、キョトンとしてユイは和風の家の庭に入る。まるで自分の家のような彼女の様子にも、誰も咎めることは無い。


といっても、この家にいるのはたったの二人しかユイは知らない。
そしてその内の一人を見つけて、縁側に駆け込んだ。


「あ、ユキにゃんだー!ユキにゃん、喉乾いたからジュース持って来て!」


倒れこむようにして縁側に寝そべったユイを仁王立ちで睨むのは、誰が見ても竦み上がる程の威圧感のある端整な面立ちの青年だった。ユイよりもかなり長身な彼に睨まれても、へらりとだらしなく笑う緩い少女。


寝そべった反動で、ユイの顔が見えやすくなった為にか、青年はじっと彼女を見つめる。それに気付いたユイは、困ったように前髪でまた顔を隠す。