香音も香音で、吾妻に対して何の感情も持っていないわけではない。確かに純粋な恋心ではないけれども、誰でもよくて彼と付き合っているわけでもない。


吾妻 雄大だから、選んだ。そして吾妻 雄大もまた、雨宮 香音だから彼女の存在を受け入れたのだ。















吾妻と香音が向かったのは、いつものCLUB。大抵は二人でそこで過ごしている。
吾妻かCLUBに姿を見せるなり、その場の空気が張り詰める。彼の美貌はやはり全ての者を惹きつける。


そしてその吾妻に並ぶ香音もまた、いつも浮かべる笑みはそれだけの魅力を持つ。あの吾妻が本気になった女として、香音としては予想外に自分の事が広まったと感じていた。


それでも、それが吾妻と共にいるために必要なのだから仕方ない。
香音は脳裏に浮かんだ人物を消し去るように、CLUBの2階にある部屋に入った。


この部屋は吾妻と、そして彼の友人達がよくたむろしている部屋で、既に顔見知りの人達がお酒を飲んでいた。
吾妻と香音が来たのを見て、未だ慣れないのか息を詰まらせる者もいる。


それくらい、吾妻が特定の女を作るというのは驚愕の事だったのだ。
そして誰もが、吾妻の一時の火遊びだろうと思っていたし、当の本人達でさえこの恋愛に純粋な想いを持ってはいなかった。