ぐいっと、板チョコをあたしに押し付け…いや、手渡す。

『やっぱお前は笑ってる方がいい。』


そう呟いた小さな声は、私の耳には届かなかった。

聞き返す勇気など、あたしにはない。


『そんなに渡したいなら貰ってやってもいい的な?』


『あーやるよ。どうせ要らねーやつだし。』


む、そっちがその気なら今すぐにでも食べてやる!

バリバリと包装紙を剥がし、齧る。


『甘っ!』一口食べれば、それはまるで━━ 甘い甘い恋の味。


『な、甘いだろ?俺、チョコレート大好きなんだ!』


「なんか元気でるんだよな〜」と言いながら笑う。甘党なのか、男子の癖にまるで女子。

でも、こんな奴にいちいちドキドキするなんて、あたし絶対どうかしてる。


『あたしもチョコ、嫌いじゃない。』呟くように言った。


『元気出た?俺毎日チョコレート持ってるし。』

得意げな顔で「ほらっ」と言ってポケットから沢山の一口サイズのチョコを取り出す。



なんで毎日持ってんだよ!Σ⊂(゚Д゚ )


…でもよく考えたら、これってあたしを元気付けようとしたって事?

駄目。勘違いは止め。だけど…..


━━ 神様、ちょっとだけ…ほんの少しだけ…期待しちゃうから。