ガラガラッ
ちょうどその時、教室のドアが開いた。藤咲先生だ。
『藤井ちゃーん!学級日誌ちょうだい。』いつものようにタメ口で話しかける。
『日誌ね、今渡すわよ。』と言って教卓の方の自分の荷物をあさった。
違和感。いつもは「ちゃん付けしないの」など毎度お馴染みの台詞で怒ってくるはずなのに。
『どうぞ。』と言って笑顔で手渡してくれたけど、どこか元気がない。
『ありがと。えっと…』何を聞けば…?どう声をかければいいか分からなかった。
あたしは俯きながら再び教卓の方に戻ろうとする先生をじっと見つめた。
一瞬だからよく見えなかったけど、丸く大きな目が赤く腫れて見えた。
これは、きっと世で言う大人の事情。
…それでもあたしは気がかりだった。
先生は、あたしたちが悩んでいる時必ず手を差し伸べてくれる。
困っていそうであれば誰にでも、声をかけている。
見て見ぬ振りなんてしないし、差別もしない。あたしにとって最も理想的な先生。
それがどんなに些細なことだったとしても構わない。ちゃんと心に残る。
な〜んて、もうすぐで卒業してしまうから、余計先生が恋しくなるのかもしれない。
