『そっか用…ってあんた誰!?』見上げると、背の高い美少年が立っていた。
泣き顔を見られたのはこれで2回目(?)あたしは慌てて顔を隠す。
少年はゆっくりとしゃがみ込み、あたしに無言で傘を差し出した。
『はえ?』しゃがんだままテンパってるあたしと目線が交わる。
『傘なきゃ濡れるだろ。』と言い残し何処かに行こうとする。
『ちょっと待ってよ!』呼び止めた。だけどその声は彼の耳に届いてなくて。
あたしと同じ中学校の制服だ。それにしても…見かけない顔。
まぁ当たり前か…今年の三年生は全部で8クラス。あたしの通う中学校は生徒が多い。
バタン。
その少年は家の中に入った。
新品の藍色の傘は返しそびれ、結局持って帰ることにした。
雨はさらに強くなり、あの人の姿はすっかり見えなくなった。
