「はぁ…はぁ」あたしは駆け足で坂を登った。
『じゃあね〜。ちーちゃん』
『智代子、またあしたな。』二人は大きく手を振る。
『うん、またね!』二人の挨拶を聞いて見届けると、再び走った。
ここで…ランニングしてた時、君に出会ったことがあった。
ここで…君が私服で歩いてる所に遭遇したこともあった。
ここで…犬の散歩に来た君に会って、一緒に犬と遊んだこともあった。
全部全部全部覚えてる。気がつけば涙が零れてた。
それでもただ走る。あたしの涙とシンクロして雨が降り始めた。
『お前泣いてんの?』懐かしい君の声。ばっと後ろを振り返ると…
誰もいない..…。
どうやら幻聴。“戻ってくる”なんてコトバ嘘でしょ?
「ははは…バカみたい。」漏れた言葉は虚しく消えた。
『晴樹はこの街にいないのに…』気づけばそこは晴樹が住んでた場所。
もう昔の面影はなく、見知らぬオシャレな家が建ち並んでた。
急に全身の力が抜けてその場に座り込んでしまう。
『ここの家になんか用か』不意に、後ろから声をかけられた。
『…へ?!』
いずれ、これも運命の出会いとなる━━━
