『うるさいぞ♡』語尾にハートをつけながら注意する藤咲藍子先生、23歳。
まだすごく若いのに、ベテラン並みの怒り方。殺気すら感じる。
そしてゴホンっと一回咳払いし『金城さんの小言もよ〜く聞こえたわ』とすかさず注意。
『はぁい』反省の色があまり感じられないやる気のない返事。あたしも慌てて返事した。
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『二人とも、授業しっかり受けないと。』優香は小走りでこちらに向かう。
気づけば放課後。心配そうな顔をしながらあたしの席の横に踏みよった。
『えへへ、ごめ〜ん』でも正直、一人で悲しみに浸ってるより何倍もよかったかな。
美咲は『智代子があまりにも一途すぎてムカついたから。』とブツブツ文句を言う。
『それとこれは関係ないでしょ!』と答えると、美咲が何かを耳打ちして来た。
“一人で勝手にしょぼくれてんじゃないわよ”
見透かされていた。流石小学校4年生からの付き合いである。
『別に心配される筋合いないし。』
『心配はしてないけど?』この涼しい表情。相変わらずだ。
『なになに?』と、優香。
『ん?』優香はきっと何もかも知ってるから、わざとらしく誤魔化した。
一途なんて柄じゃない。
ただ初恋を忘れられないだけ。
