努、梨々子の前だとこんなだったんだ。


…私の知らない努だ。




「祐美子ー、はよ」

「おはよー、今日も可愛いね、梨々子」

「何それー。あ、松本君もおはよう」


私から梨々子は努に視線をうつすと、笑顔で会釈する。


「う、うっす」


緊張してるのか、少し上ずった声の努。





……嫌だ。

やっぱり嫌だ。



「祐美子、本当にありがとね」


梨々子は私に顔を寄せると、こそっとそう囁く。
…この嬉しそうな顔。


…今私が弘を好きって事になってるだなんて言えない。