ドアの向こうには囲むようにニ、三人がいて、視線の先から叫び声が聞こえた。
泣き喚く声は、小学生のような、幼稚園児のような、拙く本心を真っ直ぐぶつけているようだった。
「ふぅざぁけっんなってぇ!」
「だからなんなんだよ」
「かぁーえーせぇ!」
「は?」疲れた声が答えた。なにがなんだかという感じだった。
「なんかちょっと変だね」と陽菜が言った。
声の主が勢いを増して叫び出す。やじうまが驚いて数歩のけ反ったところで、教室の中の私たちからも叫び主が見えた。
「あの人だれ?」
「神永くんだよ!」
神永くんか。全くわからないや。
「クラス違うからしゃべったことないけど、神永くんってすごく頭いいんだよ。総合で二位」
「総合で二位!? 神永くんすごい!」
「そう! すごいの! ……ってそうじゃなくて」
「うるさぁい!」
叫び主神永くんが左の拳を振り上げたところで、ようやく先生が到着した。
それから二人は先生方に別々のところに連れられて、事なきを得た。
「なんだったんだろうね」
「さぁ……。神永くんがね」
「神永くん……」
私たちは一度も神永くんとしゃべったことはなかったけど、少し心配になった。勉強のやり過ぎかな? 頑張りすぎるのは良くないよね。
チャイムが鳴って陽菜が「じゃ、また帰りに!」と自分のクラスに戻っていく。
「なんか変だなぁ」
私は午後の授業の間もあの幼いような声が頭から離れなかった。
授業に集中しなきゃと思うと、なおさらにどっちつかずになった私は、結局、ノートに絵を描くという姑息な手段で頭を休めることにした。
急に瞼が落ちてきた。
「あれ?」と思う間もなく、視界は深く暗く、心地よい眠りに入っていった。
