男のひとり言ー「むとうさん」番外編

武藤はヤクザとして大成する資質を備えていた。賢さ、武闘派、牽引力、危険を顧みない。そして何よりも大切な、お金稼ぎが非常に上手だった。

表面的には、娯楽がなくても稼業に集中できた。武藤は機械のように極道としての稼業に打ち込んだ。

唯一のストレス発散は好きな車を買うことだった。色んな女をはべらすかわりに、色んな車を所有して、暇なときに近隣の海まで走らせ1人になる。

武藤はこの組織に所属して、稼業をこなす中で社交性を身につけた。いろんな人間との色んな付き合いをこなすうちにそれが培われた。

しかしながら、プライベートにおいては素人だった。それなりの女性経験もあるが、ここ数年は自分の心に無理をしてまで女性と付き合いたいと思わなかった。自分が何をしたいとか、そういうものが分からなくなっていた。

武藤は、慶子も恋愛に関して同様の人間だと見抜いていた。仕事に関してはそこそこの評価をされ、打ち込み、プライベートも表面的には色々な付き合いがあるが、恋愛に関してこじらせていると。

普通の男なら、他の男(しかも不倫相手になっていた)との恋愛の精算に付き合うなんて面倒で自分に関係のないことに付き合わないだろう。

しかし、武藤は慶子に何かをしてあげたいと思うことがあった。見守ってやりたい存在だった。

曖昧な関係を壊れないよう、一定の距離感を保って。