男のひとり言ー「むとうさん」番外編

山崎と知り合うきっかけもそうだった。

バイト先のチンピラに一方的にいちゃもんをつけられ、そのチンピラが山崎の舎弟だった。

山崎はそのチンピラをその場でライターを握った拳で殴った。頭から血が流れている。

今思うと武藤は試されていた。それを見てどのような態度を取るか。

武藤は山崎が自分の両親に金を貸していたことを知って、探っていた。腹の探り合いだ。

でも、自分のために食事を用意してくれることがとても嬉しかった。歪んでいても、小学校のころからご飯をまともに親と食べず高校生になってしまった武藤にとっては大切な時間だった。

柏木さんのところで出会った鈴木慶子の第一印象は、生真面目そのものだった。
それは今も変わらない。

真っ直ぐ育っているが、社会の理不尽さに角を立てず適応できる賢さを身につけた人間と言ったところ。

その賢さと真面目さ故、先へ先へ考えすぎてしまって一人でこじらせるところがある。

武藤はその生真面目さと、人当たりの良さの裏に隠している不器用さに好感を持った。