男のひとり言ー「むとうさん」番外編

小遣いも稼いで、お金も少し他の高校生に比べて持っていて、自由な生活を送っているかもしれない。

でも、武藤は一刻も早く家から出たかった。車も欲しいが本心は家を出るための貯金だった。

高校を卒業して就職することも考えた。だが、親は無理にでも大学へ進学させようとしたし、できるだけ良い大学へ進学して、給料のいい企業の勤め人をして、お金に困らない家庭を築きたい願いも高校生のころから既にあった。

自分はこんな親たちのように、それぞれがただの同居人でいる関係は嫌だった。

そんな円満でなくとも、自分の子どもにお金のことで心配させたくなかった。

武藤は時々おかしなところがあった。確かにそれなりに手を抜くところはあったが、学校の掃除当番をいたって真面目にやっていたり、地元で不良仲間とつるんでいる時も武藤がやりたくないことを先輩に強制されても一切やらなかった。

武藤はそのようなことで時々周囲をヒヤッとさせた。決して喰い下がらない。力を持ってる人間に脅されても堂々としている。弱い人間の心を見抜いているからかもしれない。

大抵は武藤の恐れ知らずの態度に逆におののいて終わるのだが、時に暴力を振るってくる不良もいた。

若い頃の武藤は容赦がなかった。リミッターが外れている。不良は変に素手ゴロで、とかメンツを大事にするところがあるが、武藤はそもそも自分が不良に属していたいわけではなかったため、素手ゴロなんぞ言われても平気で金属バットなどを持っていく。

武藤は感情でそういうことはしなかった。群れの中じゃ常に普通にしていて目立ってしまうので、相手から勝手にくるのだ。

それを振り払う中で、暴力性は培われていった。