男のひとり言ー「むとうさん」番外編

「わぁ…」

空を見上げると、真上から風も音もなく雪が降ってくる。

「今時間は?」

「あ…携帯と時計、部屋に忘れてきちゃいました…。」

「ちっ。どうすんだよ、この後。」

部屋に戻るにも、ここに残るにも、新年までの時間を考えるとなんとも言えないタイミングだった。

「どうしようかな…」

慶子は肩を抱いて言った。

「寒いのか?」

「はい少し…」

「戻るか?」

「でももうちょっと武藤さんと二人きりでいたい。」

「部屋戻っても2人だろ。」

「なんかここ静かで、世界で二人っきりみたいな感じがして…」

慶子のするんとした輪郭をライトアップがうっすら映し出す。
まだ何にも触れていない白い雪が慶子の肌の生気を強めている。

「あっ…」

武藤は後ろから慶子の肩を抱き寄せた。

慶子は武藤の胸に顔を埋めてみる。胸割りの化粧彫りが浴衣からくっきりと見える。さっきは脱衣所の開いたドアから浴衣を羽織る武藤さんの背中が見えた。

くっきりと身体の動きに合わせてうごく背筋に、大きな虎が竹林で吠えていた。鏡の中の武藤さんと目があってしまって、思わず覗き見していたことも忘れて綺麗、だなんて呟いてしまった。

この裏側には武藤さんの心臓とかがあって、その裏に虎が住んでいるんだ。

武藤の胸の中にいると温かくて落ち着く。だけど胸の刺青が目に入る度にきゅーっと血圧が上がるようにくらくらする。
心は忙しい。顔を上げて、武藤さんの顔を見たら、私は…