「あの、如月さん。いま、少し大丈夫ですか?」
このときはまだ役職としては課長補佐だった如月を、如月先輩と呼ぼうか如月さんにするかうーんと少し逡巡したあとで、さん付けで呼ぶことにした。
ここにきてから彼と話すのは初めてだし、やっぱり笑顔って大切だよね!とにぱーっと笑いながら声をかける。
(まあアタシはあんたの醜態をしっかり脳裏に焼き付けてますがな!)
するとパソコンから顔を上げた如月は、声をかけてきた琴子の顔を、頭にクエスチョンマークでも付いてるのかという勢いで凝視してくる。
なるほど用件を言えということかと、琴子は口を開ける。
「あの、少し分からないことがあって。
申し訳ないのですが教えていただいてもよろしいでしょうか」
「……ああ。ちょっと席で待ってろ、いまこれだけ終わらせたらお前のデスクにいく」
「ありがとうございます!」
そしてカタカタとさっきにも増してすごい勢いで仕事をこなしていく如月。
うわあ、バケモノ、と失礼極まりない賛辞を心の中だけで呟いて、琴子は自分の席に戻る。



