「案外、音だけで煽られるもんなんだな」 「え……」 「何でもない」 そして如月はようやく振り返ると、諦めに似た笑みを浮かべる。 「あのな」 「はい」 「あんまり、煽ってくれるなよ。 約束は守る努力をするが、いつ俺だってタガが外れるか分からないんだ」 そして、ペチリと頰に彼の右手が置かれて。 眉を寄せて笑う如月のその表情は意外と、煽情的で。 このとき今日初めて琴子は彼をオトナの男と認識した。 「……はい」 そうして添い寝1日目は少しだけ張り詰めた空気の中、幕を下ろしたのだった。