「………最近」
「はい」
ごくり、と息を飲む。
なんだ、いったいなにを言われるのだろうか。
「野菜が摂取できてない」
「はあ」
思いもかけない台詞に、琴子は間の抜けた返事をしてしまう。
なにをこの上司はおっしゃりたいのだ。
「俺は今、電車に荷物を忘れた可哀想な部下のために電車を乗り継いでその袋を届けに来た」
「………はい」
………嫌な、予感がする。
ちらりと如月の視線が、彼の左手ーー、白いビニール袋の中身へと注がれた。
「そしてその袋の中身はなんだ?」
そして目の前の男の目がキラリと光った、気がした。
「…………。野菜です」
「ちなみに俺はあまり料理が得意ではない……が、今日は家庭的な野菜料理が食べたい」
その台詞になにを要求されたのかを察して、琴子は頭を抱えたのだった。



