到着した場所は公園というより庭園という感じだった。
市の記念物か何かに指定されているらしく、
かなり広くて敷地全体を歩くのには半日くらいかかりそうだった。
様々な種類の緑の木々が生い茂り、
春は花見、秋は紅葉狩りで多くの人が訪れるらしい。
近くにこんなにきれいな場所があったんだ、と感心した。
「今はどっちの季節でもないですけど。
桜が咲く頃には、お花見に来ましょうか?」
問いかけられて、透子は笑顔で返事をした。
「いいですね。お弁当とか作って。すごく楽しそうです」
「そういえば天音さん、料理教室に通ってるんですよね。
お上手なんでしょう?」
そんな嘘を言ったことがあったと思いだし、苦笑する。
「最近はほとんど通えてないんです。
あんまり期待しないでください」
「天音さんの料理ならどんな劇薬でも食べたいです」
「劇薬はひどいです!」
他愛のない会話をしながら、
小さな橋を越え池がある場所に来た。
「ちょっと座ってのんびりしましょうか」
「はい」
飲み物を買ってベンチに座って、
二人で大きな池を眺める。
池の中では鮮やかな赤色の大きな鯉がゆらゆら泳いでいた。
今日は日差しが暖かく、二月ももうすぐ終わりだけれど
外で座っていてもあまり寒さを感じなかった。

