「おまたせしました」
声が聞こえて顔を上げると、上条が近くに立っていた。
「何か欲しい本は見つかりましたか?」
「いえ、大丈夫です」
彼が戻ってきたので、ほっとして隣に並んだ。
☆
そんなことをしている間に夕方になり、少し早いけれど夕飯を食べることにした。
今日はパスタにしようということで意見がまとまる。
他愛もない話をしながらパスタを食べ終わると、すっかり外は暗くなっていた。
あっという間に時間がたったのに驚いていた。
「少し歩きますか?」
「はい」
そうして上条と二人でゆっくり駅の方向に歩き出す。
「天音さんは今日は電車ですか?」
「そうです」
「じゃあ、駅まで送ります」
「はい」
透子は内心ほっとしていた。
彼が車で来ていることは知っていた。
車で送りますよ、と言われたら断るのが面倒だ。
また嘘の場所まで送ってもらい、そこからタクシーかバスで家の方向まで帰らないといけない。
無駄な時間と出費は極力避けたい。
駅までの道は電飾でライトアップされ、美しかった。
途中の小さな広場の中央には噴水がある。
上条が少し話したいというので、透子は噴水の前の石で出来たイスに腰掛けた。

