透子の瞳から、涙が伝う。


「最初お前のことが気になるって自覚した時、
すごく動揺したよ」


それでも黙って、じっと彼の言葉を聴き続けた。


「何でこんな風になるのか、
さっぱり分からなかった」


上条は優しく目を細める。


「でも当たり前だよな。
天音さんも七瀬も、どっちも同じ人間なんだから」

「はい」


「七瀬が辛いなら、
いつもみたいな顔で会社に来たらいい。

これからもがんばろうって思えるなら、
普段の七瀬も天音さんみたいになればいい」


温かい指が、そっと涙を拭った。


「俺はどっちも好きだから」


「はい」


耳元で彼の声がささやく。



「お前も俺のこと、好きってことでいいか?」



「……ごめんなさい」